中小企業の経営者の引退年齢は、会社の規模や業種にもよりますが、平均すると67歳~ 70歳です。
現在の経営者の年齢分布を踏まえると、今後5年程度で多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えると予想されます。
相続対策という面では、自社株の相続を行うことになりますが、事業の存続という面では事業承継対策を検討することが重要です。
会社としてこれからも存続できるにも関わらず、事業承継の進め方、実情に対する認識が不足しており、事業承継への着手を先送りした。
そのために後継者を確保できなかったというケースもあります。
後継者の育成期間を含めれば、事業承継には5年~10年を要するものと考えられます。
経営者の平均引退年齢は70歳前後。後継者の育成期間を踏まえると60歳ごろには事業承継の準備をスタートしたいところです。
事業承継では、後継者教育などを進めながら経営権を引き継ぐ「人(経営)」の承継、自社株・事業用資産、債権や債務など「資産」の承継、経営理念や取引先との人脈、技術・技能といった「知的資産」の承継を、計画的に着実に進める必要があります。
事業承継をスムーズに進めるためには、自社株の取得に伴う相続税や贈与税の負担、経営権の分散リスク、事業承継後の資金繰りなど、さまざまな課題に対応していくことが求められます。
経営後継者の育成には、5年~10年ほどかかることも。
(1) 経営権
(2) 後継者の選定・育成
(3) 後継者との対話
(4) 後継者教育
経営者の個人資産について会社との関係を整理する。
(1) 自社株
(2) 事業用資産(設備・不動産等)
(3) 資金(運転資金・借入金等)
(4) 許認可
経営者と従業員の信頼関係も知的資産の一つ。
(1) 経営理念
(2) 経営者の信用
(3) 取引先との人脈
(4) 従業員の技術・ノウハウ
(5) 顧客情報
事業承継に向けた早めの準備の必要性を認識するための「事業承継診断」や経営者と支援機関との事業承継に関する対話・相談に取り組む。
従業員の雇用や、取引先との信頼関係など、会社が周囲にあたえる影響は小さいものではありません。
引継ぎといっても経営者の身内だけの問題ではないことをあらためて理解しておく必要があります。
後継者を次期経営者として必要な能力を備えた人物として育成することは、一朝一夕ではできません。
また、事業用資産や経営資源の承継も十分な時間を取って計画的に進めていく必要があります。
事業承継を着実に進めるためには、早めの着手が肝要です。
経営者が将来の事業承継を見据えて、本業の競争力の強化などにより企業価値を高めることで、会社を後継者にとって魅力的な状態にまで引き上げる。
未来に向けて経営方針を定める必要があります。その最初の一歩は、会社の経営状況を把握することです。
事業をこれからも維持・成長させていくために、利益を確保できる仕組みになっているか、商品やサービスの内容は他社と比べて競争力を持っているかなどを点検しましょう。
【磨き上げ事例】
経営状況を把握するためのツール(中小会計要領・ローカルベンチマーク・知的資産経営報告書等)を活用しながら、経営の見える化を行い、課題の改善に向けた方向性を明確にする。
企業価値の高い魅力的な会社とは、どのようなものでしょうか。
一つは、他社に負けない「強み」を持った会社。もう一つは、業務の流れに無駄がない、効率的な組織体制を構築した会社です。
自社が強みを有する分野の業務を拡大していくとともに、各部署の権限、役割を明確にして業務がスムーズに進行する事業の運営体制を整備しましょう。
円滑に引継ぎを進めるために、後継者とともに、株式、事業用資産や代表権の承継時期を記載した事業承継計画を策定する。
経営の「見える化」、会社の「磨き上げ」を進める過程で明らかになった経営上の課題を解消しながら、後継者と二人三脚で策定した事業承継計画、あるいは希望に適った相手とのマッチング条件に沿って、資産の移転、経営権の移譲を進めていきます。
株式、事業用資産や経営権の承継を実行する。
事業承継の準備を早めにスタートするメリットの一つは、事業を承継できる体制を早い段階で整えられることです。
会社の業績、市場の動向を踏まえてベストのタイミングで事業承継を実行に移せることです。
また、後継者の手腕、適性をじっくり見極めることもできます。